かぜ》の勢《いきほひ》こゝが峠《たうげ》といふ処《ところ》で忽《たちま》ち泥海《どろうみ》。
此《こ》の洪水《こうずゐ》で生残《いきのこ》つたのは、不思議《ふしぎ》にも娘《むすめ》と小児《こども》と其《それ》に其時《そのとき》村《むら》から供《とも》をした此《こ》の親仁《おやぢ》ばかり。
同一《おなし》水《みづ》で医者《いしや》の内《うち》も死絶《しにた》えた、さればかやうな美女《びぢよ》が片田舎《かたゐなか》に生《うま》れたのも国《くに》が世《よ》がはり、代《だい》がはりの前兆《ぜんちやう》であらうと、土地《とち》のものは言伝《いひつた》へた。
嬢様《ぢやうさま》は帰《かへ》るに家《いへ》なく世《よ》に唯《たゞ》一人《ひとり》となつて小児《こども》と一|所《しよ》に山《やま》に留《とゞ》まつたのは御坊《ごばう》が見《み》らるゝ通《とほり》、又《また》那《あ》の白痴《ばか》につきそつて行届《ゆきとゞ》いた世話《せわ》も見《み》らるゝ通《とほり》、洪水《こうずゐ》の時《とき》から十三|年《ねん》、いまになるまで一|日《にち》もかはりはない。
といひ果《は》てゝ親仁《おやぢ》の又《
前へ
次へ
全147ページ中142ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング