以上の最も大切な或物を示されないからです。また、その活動の外に、それ以上の最も大切な或物を直接の目的とした活動を全く示されないからです。
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私の言う「最も大切な或物」とは何でしょうか。一言にして言えば生活の理想です。言い換れば、それらの活動は唯だ目前の物質生活の利害のみを眼中に置いています。最も大切な文化生活の理想に照して、その価値を批判することが閑却されています。活動とはいえ、その実際は妄動に等しいものです。行き着く港を定めずに、激変しつつある時勢の荒浪の中に、無方針の航海を続けているのです。それらの指導者側の婦人たちは、私たちに対して自覚を叫ばれ、内省を奨《すす》められるのですが、私たちから見れば、自覚といい内省ということが何よりも「我々の生活の理想は如何《いかん》」という第一義的なことに向けられねばならないことを、かえってそれらの婦人たちは失念しておられるように思われます。
すべての活動は、それが文化価値実現の過程に役立つと否とに由って私たちの生活の内容となることが出来ます。文化生活の理想に由って批判されず精錬されない行為は、無駄と錯誤とが多く、中には反対に文化生活の創造を妨害するものさえあります。今後の生活が個人各自の自覚の上に立つ生活であらねばならぬというのは、この点に自覚することをいうのだと思います。
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私は少しく具体的に述べてそれらの先輩婦人たちに抗議します。指導者側のそれらの婦人たちの中の或人たちが、経済的労働を私たち婦人に奨励されるのを見ると、その目的が利殖の外に出でず、その方法が振売《ふりうり》商人の暴利を狙《ねら》う不正手段と大差のないものであるのに呆《あき》れます。例えば二円の資本で水菓子を工場の労働者に売って、一時間ほどの中に一円の純益を挙げるというような事を、得意になって私たちに教えられるのです。それは文化主義の理想と相容れない経済上の専制思想――即ち資本主義の思想であることに、その指導者が全く自覚を欠いておられることだと思います。
また或人たちが各種にわたる家庭の内職を紹介して婦人や小児に奨励されるのを見ると、その労銀の余りに低いことや、その仕事の余りに人間を過労させることや、殊に幼年期の子女までを昼夜にわたって時間の制限もなく座職の中に虐使することやについて、経済的、倫理的、人道的の顧慮が全く払われていないのです。その一例を言えば、玩具《おもちゃ》の「起き上り小法師《こぼし》」を材料は手前持ちで千個作って、得る所の賃銀は纔《わず》かに壱円二十銭です。また麻を心にして布をくけ附ける下駄の鼻緒は百足作って十六銭の賃銀が与えられるだけです。一千個の「起き上り小法師」、百足の鼻緒、それは大分の熟練をつまねば、家庭の婦人の手で一日に仕上げることは出来ないものでしょう。今日物価の騰貴に追随して、是非ともその賃銀だけの収入を得なければならないとすれば、一日十五、六時間の勤労を費して、それを仕上げるでしょう。ああ、この単調な、不愉快な、大量な、苦痛な長時間の労働、其処《そこ》には物質に使役される人間の機械化、過労のための人格の圧殺があるばかりです。乏しい賃銀ながら、それに由って生物として飢餓線を守ることは出来るでしょう。しかし人格者としての生活は無残にも枯《から》されてしまいます。文化生活に必要な精神的教養の余裕もなければ、自己の天分に応じた独得の文化生活を創造する見込も全く断たれてしまいます。これが果して私たちのために望ましい家庭内職でしょうか。その指導者たる婦人たちは文化生活の理想について自覚がないために、その活動は、文化主義の敵である資本制度の下に盲従して、婦人や小児を賃銀奴隷の位地に堕落させるような意外な結果になっているのです。もしそれらの婦人たちの眼が生活の理想に向いて開いていたなら、そのような内職を無条件で取次ぐことなく、賃銀の値上を問屋に対して要求すると共に、内職の過労と人間の機械化とから解放されることを家庭の婦人たちに勧告されねばならないはずだと思います。全国の処女会に関係する指導者側の婦人たちが唯だ「強く働け」というような事ばかりを奨励されるのも、私から見れば何たる無自覚な言動であろうと浅ましく思われます。
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また台所の構造の改良、廃物の利用、衣服の改良、混食代用食の奨励、贈答や送迎の廃止というようなことに努力される婦人たちについても、それが余りに局限された一部分の改革であって、今日の大局から見て、或物は閑問題であり、或物は徒労問題であり、また或物は文化生活を裏切るものであるとさえ思われます。
飢饉時代でない限り、人間に向って不味な食物を以て辛抱せよと奨励することは、人間の本能を無視した不自然な行為です。人間の料理法は永い
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