心弱きを今さらに
あやしむ勿れ我が友よ
雲のよそなる西の京
祇園あたりの高楼の
おばしま近く彼の君と
春を惜まん夕あらば
忘れ草生ふ住吉の
松原つゞき茅渟の浦
つらはなれたる雁金の
音になくあたり忍べ君
あれかさのみ多き世に
人の心のつらき時
同じ思ひに泣く友の
はるかにありと知れよかし
松の葉ごしの夕月に
君が片ほの青きかな
かのあづまやのともしびは
我がまたゝきに似たらんか
ふたりのたてる袖がきに
絶えず散り来る白梅の
再びさかむその春に
我は逢ふとも思ほえず
忘るゝなかれこの夕
忘れ給ふな此夕
鴨の流れは清くとも
さがの桜はいみじかるとも
紅情紫根
(人の『山蓼』の詩にそへて友におくれる)
ほそ筆もつ子
え堪へんや
友の終《つひ》の身
調《てう》を問ふな
長き詩みじかき歌
ある日ある時
ねたしと見し
そのゑすがた
手筥に今
後《のち》も秘めむ
理想の友
姉と謂ひて
うなじまくに
このかひな
あまりかよわし
とかば髪
四尺はあらむ
胸により
わななくたけなが
あゝ裏くれな
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