の梅に白ゆきの
  かゝれる色か唇の
深紅の色は汝をば
  はてなくめづる此をばの
ま心にしも似たるかな
  かたことまじり※[#「姉」の正字、「※[#第3水準1−85−57]」の「木」に代えて「女」、9巻−305−下−12]様と
我が名よばるゝそのたびに
  あゝわがむねに浪ぞ立つ。
あゝさるにても幼子よ
  恋故くちし此をばが
よきいましめぞ忘れても
  枯野か原をひとりゆく
かなしき恋をなすなかれ
  千草八千草さきみてる
そのはなぞのにぬる蝶の
  たのしき夢は見るもよし
あゝそれとてもつかのまよ
  思へばはかなをさな子よ
など人の世にうまれ来し
  いつ迄くさのいつ迄も
かくてぞあらんすべもがな
  神のすがたをそのまゝに


  後の身

生きての後ののちの身は
 何にならんと君は思ふ
  恋しき人はほゝゑみて
   我は花咲く木とならむ

さらばゆかしき桜木か
 朝日に匂ふさま見れば
  君が心にふさはしき
   すがたは外にあらじかし

さかりいみじき一ときの
 夢は昨日とすぎされば
  今日はとひこん人もなき
   心のうらを見んもうし

さらば軒端のたちばなか
 
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