つて愛護されるので無く、香りの特に烈しい、背の高い水仙も、それが貨幣に換へられないと云ふ理由と、畑地の妨げになると云ふ理由とで、成ることなら根絶するやうにと望まれてゐるのです。
 私達は島に來て、傳説的な想像は少しく幻滅しましたが、併し温暖な氣候と日光との中に、滿山の椿と水仙とを目にした實感は猶武陵桃源の趣がありました。午後二時半に島を辭しようとすると、區長さんが島人を代表して澤山の蠑螺を返禮に贈つて下さいました。歸りの船は午後五時前に伊豆山の相模屋の裏手の磯へ着きました。
 歸つてから、良人は初島の歌を澤山に作りました。



底本:「現代日本紀行文学全集 東日本編」ほるぷ出版
   1976(昭和51)年8月1日初版発行
※巻末に1921(大正10)年10月記の記載あり。
入力:林 幸雄
校正:松永正敏
2004年5月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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