上に不便であるなら、すべて酌婦の名義で届|出《い》でる手続きを取らせてもよい。私娼の意義が明示されるような名は宜しくない。今日では芸妓も裏面では私娼の事を行う者が多いのであるから、検黴制度を彼らにも及ぼすのが当然である。
 私は内務省が先きに絶滅させる必要のある、そうして絶滅させることの容易な公娼を存して置いて、絶滅させることの難い、そうして存置する方が公娼よりも害毒の露骨でない私娼を撲滅しようとするのを見て、その無駄な努力を惜むよりも、更にその社会的影響の好くないことを想う者である。内務省の真意は公娼を倫理的に公認するのではないのであるが、世の公娼営業者、多数の放恣《ほうし》な男子及び多数の無智な女子はその意味に解釈しようとするであろう。
[#地より1字上げ](『太陽』一九一六年六月)



底本:「与謝野晶子評論集」岩波文庫、岩波書店
   1985(昭和60)年8月16日初版発行
   1994(平成6年)年6月6日10刷発行
底本の親本:「我等何を求むるか」天弦堂書房
   1917(大正6)年1月初版発行
入力:Nana ohbe
校正:門田裕志
2002年5月14日作成
2003年5月18日修正
青空文庫ファイル:
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