だろうとは思うけれど、私に正直なことを言ってくれない点が恨めしくてならない」
 と言っておいでになりながら、その宿縁が並み並みでなかったから思う人に再会することができたとお思われになることで涙ぐまれたもう宮であった。いつものように冗談《じょうだん》混じりのことでなく、どこまでもまじめでおありになるのが気の毒で、どんな噂《うわさ》をお聞きになったのであろうと驚かれる夫人は、返辞もできなくなってしまった。初めがあんなことであった自分は良人《おっと》の尊敬に値せぬように思われているのであろう、姉の女王《にょおう》への恋のために常識も失うばかりであった人が、導いて結ばせた縁であって、自分はまた姉の死後にまで持たれる誠意に好感を持つようになったことが原因で、愛を失った妻になったのであろうと過去のことも思われて、いろいろなことが皆悲しくて心をめいらせている中の君はいよいよ可憐《かれん》な人に見えた。
 あの恋人を発見したとはなおしばらくの間知らせずにおこうとお思いになるために、ほかのことに思わせて宮は怨言《えんげん》を洩《も》らしておいでになるのを、中の君はただ薫《かおる》のことでまじめに恨みを告
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