でになった。自身が信頼して、強情《ごうじょう》で恨めしいところはあっても、機嫌《きげん》をそこねまいとしている常陸守よりも姿も身分もずっとすぐれたような四位や五位の役人が皆おそばに来てひざまずいて、いろいろなことを申し上げたり、御意を伺ったりしていた。また年若な五位などで、この夫人にはだれとも顔のわからぬお供も多かった。自身の継子の式部丞《しきぶのじょう》で蔵人《くろうど》を兼ねている男が御所の御使《みつか》いになって来た。こんな役を勤めながらも、おそば近くへはよう来ない。あまりにも普通人と懸隔のある高貴さに驚いて、これは人間世界のほかから降《くだ》っておいでになった方ではないかという気が常陸の妻にはされた。こんな方に連れ添っておいでになる中の君は幸福であると思った。ただ話で聞いていては、どんなりっぱな方でも女に物思いをおさせになってはよろしくないと、憎いような想像をしていた自分は誤りであった、このお美しい風采《ふうさい》を見れば、七夕《たなばた》のように年に一度だけ来る良人《おっと》であっても女は幸福に思わなくてはならないなどと思っている時、宮は若君を抱いてあやしておいでになった。夫
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