と》よりほかは頼もしいもののないことは私自身の経験でも知っている。お亡《な》くなりになった八の宮様は情味のある方らしく見えて、美男で艶《えん》なお姿はしていらしったけれど、私を軽いものとしてお扱いになったのが、どんなに情けなく恨めしかったことだったろう。守は言語道断な情味の欠けた醜い人だけれど、私を一人の妻としてほかにはだれも愛していないことで、私は絶対な安心が得られて今日まで来ましたよ。何かの時に今度のような、ぶしつけな、愛想《あいそう》のないことをするのはしかたがないがね、物思いをさせられたり、嫉妬《しっと》を覚えさせられたりすることもなく、よく双方で口喧嘩《くちげんか》はしても、しかたのないと思うことは、またよくあきらめてしまうのが私ら夫婦なのだ。高級のお役人、親王様と言われて、優美に、高雅な生活をしていらっしゃる方を対象としていても、こちらに資格がなくてはつまらないものよ。すべてのことは自身の世間的価値によって定《き》まることなのだと思うと、この方がどこまでもかわいそうに思われるがね、どうかして人笑いにならない幸福な結婚をさせたいと思う」
二人は姫君の将来のことをいろいろと相
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