なく、よいほどな体格をした新婦であったから、どんな人であろう、たいそうに美人がった柔らかみのない、自尊心の強いような女ではなかろうか、そんな妻であったならいやになるであろうと、こんなことを最初はお思いになったのであるが、そうではないらしくお感じになったのか愛をお持ちになることができた。秋の長夜ではあったが、おそくおいでになったせいでまもなく明けていった。
 兵部卿の宮はお帰りになってもすぐに西の対へおいでになれなかった。しばらく御自身のお居間でお寝《やす》みになってから起きて新夫人の文《ふみ》をお書きになった。あの御様子ではお気に入らないのでもなかったらしいなどと女房たちは陰口《かげぐち》をしていた。
「対の奥様がお気の毒ですね。どんなに大きな愛を宮様が持っておいでになっても、自然|気押《けお》されることも起こるでしょうからね」
 ただの主従でない関係も宮との間に持っている人が多かったから、ここでも嫉妬《しっと》の気はかもされているのである。あちらからの返事をここで見てからと宮は思っておいでになったのであるが、別れて明かしたのもただの夜でないのであるから、どんなに寂しく思っていることで
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