の妹であるということが原因《もと》になっていてその思いが捨てられないのである、姉妹《きょうだい》といううちにもあの二人の女性の持ち合っていた愛は限度もないものであって、臨終に近づいたころにも、残しておく妹を自分と同じものに思えと言い、ほかに心残りはないが、自分がこうなれと願ったあの縁組みをはずされたこと、他へ譲られたことで安心ができず、その成り行きを見るためにだけ生きていたい気がするとあの人が言ったのであったから、あの世で宮の新しい御結婚のことなどを知っては、いっそう自分を恨めしく思うことであろうなどと、切実に寂しい独《ひと》り寝をする夜ごとに薫《かおる》は、風の音にも目のさめてこんなことが思われ、過去と未来を思い、この世を味気なくばかり思った。かりそめの情で愛人とし、女房として家に置いてある人たちの中には、自然と真実の愛も生じてきそうな人もあるはずであるが、事実としてはそんな人もない。いつも独身者の心持ちよりほかを知らなかった。そうした女房勤めしている中には、宇治の姫君たちにも劣らぬ階級の人も、時世の移りで不幸な身の上になり、心細く暮らしていたりしたのを、同情して家へ呼んだというよう
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