嬢を起こしているが、その人は聞き入れない。それで二人だけで栗《くり》などをほろほろと音をさせて食べ始めたのも、薫には見|馴《な》れぬことであったから眉《まゆ》がひそめられ、しばらく襖子の所を退《の》いて見たものの、心を惹《ひ》くものがあってもとの所へ来て隣の隙見《すきみ》を続けた。こうした階級より上の若い女を、中宮《ちゅうぐう》の御殿をはじめとしてそこここで顔の美しいもの、上品なものを多く知っているはずの薫には、格別すぐれた人でなければ目にも心にもとどまらないために、人からあまりに美の観照点が違い過ぎるとまで非難されるほどであって、今目の前にいるのは何のすぐれたところもある人と見えないのであるが、おさえがたい好奇心のわき上がるのも不思議であった。尼君は薫のほうへも挨拶《あいさつ》を取り次がせてよこしたのであるが、御気分が悪いとお言いになって、しばらく休息をしておいでになると、従者がしかるべく断わっていたので、この姫君を得たいように言っておいでになったのであるから、こうした機会に交際を始めようとして、夜を待つために一室にこもっているのであろうと解釈して、こうしてその人が隣室をのぞいている
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