とお譏《そし》り申し上げてはいたが、さすがに藤花の御宴に心が惹《ひ》かれて参列していて、心の中では腹をたてていた。燭を手にして歌を文台の所へ置きに来る人は皆得意顔に見えたが、こんな場合の歌は型にはまった古くさいものが多いに違いないのであるから、わざわざ調べて書こうと筆者はしなかった。上流の人とても佳作が成るわけではないが、しるしだけに一、二を聞いて書いておく。次のは右大将が庭へ下《お》りて藤《ふじ》の花を折って来た時に、帝へ申し上げた歌だそうである。
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すべらぎのかざしに折ると藤の花及ばぬ枝に袖かけてけり
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したり顔なのに少々反感が起こるではないか。
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よろづ代をかけてにほはん花なれば今日《けふ》をも飽かぬ色とこそ見れ
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これは御製である。まただれかの作、
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君がため折れるかざしは紫の雲に劣らぬ花のけしきか
世の常の色とも見えず雲井まで立ちのぼりける藤波の花
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あとのは腹をたてていた大納言の歌らしく思われる。どの歌にも筆者の聞きそこ
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