まったが、薄命な者であるからどうなってもよいと自身を軽く扱って、見苦しい捨てられた妻というものになり、お亡《な》くなりになったあとの父君のお心までをお悩ましさせることになるのは悲しい。自分一人だけでもそうした物思いに沈まないで済む処女を保ったままで病死をしてしまいたいと、こんなことを明け暮れ思い続ける大姫君は、心細い死の予感をさえ覚えて、中の君を見ても哀れで、自分にまで死に別れたあとではいっそう慰みどころのない人になるであろう、美しいこの人をながめることが自分の唯一の慰安で、どうかして幸福な女にさせたいとばかり願っていた、どんなに高貴な方を良人に持ったといっても、今度のような侮辱を受けながらなお尼にもならず妻として孤閨《こけい》を守っていくことは例もないほど恥ずかしいことに違いないと、それからそれへと思い続けていく大姫君は、自分ら姉妹《きょうだい》は現世で少しの慰めも得られないままで終わる運命を持つものらしいと心細くなるのであった。
兵部卿の宮は御帰京になったあとでまたすぐに微行で宇治へお行きになろうとしたのであったが、
「兵部卿の宮様は宇治の八の宮の姫君とひそかな関係を結んでおいで
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