として、心は皆妹のために与えていくつもりでございますとね。この意味をもっとあなたが敷衍《ふえん》して申し上げたらいいでしょう」
と、恥じながらも要領よく姫君は言った。弁は同情を禁じがたく思った。
「あなた様のそういう思召《おぼしめ》しは私にもわかっているものでございますから、骨を折りまして、そうなりますようにと申し上げるのですが、どうしても自分の心をほかへ移すことはできない、中姫君と自分が結婚をすれば兵部卿《ひょうぶきょう》の宮様のお恨みも負うことになる、そちらの御縁組が成り立てばまた自分は中姫君に十分のお世話を申し上げるつもりだとおっしゃるのでございます。それもけっこうなお話なのでございますから、お二方ともそうした良縁をお得になりまして、まれな御誠意をもって奥様がたをあの貴公子様がたが御大切にあそばす時のごりっぱさは世間に類のないものになりますでございましょう。失礼な言葉ですが、こんなふうに不十分なお暮らしをあそばすのを拝見しておりますと、どうおなりになるのかと、私どもは不安で、悲しくてなりませんのにお一方様のお心持ちはまだ私はわかっておりませんでございますが、ともかくも最も高いお
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