りにして言うことも、いやなこととより聞かれず心の動くことはないのである。どんなことも話し合う妹の女王はこうした結婚とか恋愛とかいうことについては姫君よりもいっそう関心を持たぬようであったから、圧迫を感じる近ごろの話をしても、そう深く苦しい心境に立ち入っては来てくれないのであったから、姫君は一人で歎くほかはなかった。室《へや》の奥のほうに向こうを向いてすわっている女王の後ろでは薄鈍《うすにび》でない他のお召し物に姫君をお着かえさせるようにとか女房らが言っていて、だれもが今夜で結婚が成立するもののようにして、こそこそとその用意をするらしいのを、姫君はあさましく思っていた。皆が心を合わせてすれば、狭い山荘の内で隠れている所もないのである。
薫はこんなふうにだれもが騒ぎ立てることを願っていず、そうした者を介在させずにいつから始まったことともなく恋の成立していくのを以前から望んでいたのであって、姫君の心が自分へ傾くことのない間はこのままの関係でよいとも思っているのであるが、老女の弁が自身だけでは足らぬように思って、他の女たちに助力を求めたために、あらわにだれもが私語することになったのである。多
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