からまた老女の弁に逢《あ》いたいと呼び出して、昨日《きのう》も話した自身の気持ちをこまごまとまた語って行き、そして姫君へは礼儀的な挨拶《あいさつ》を言い入れて帰った。
 昨日は総角《あげまき》を言葉のくさびにして歌を贈答したりしていたが、催馬楽歌《さいばらうた》の「尋《ひろ》ばかり隔てて寝たれどかよりあひにけり」というようなあやまちをその人としてしまったように妹も思うことであろうと恥ずかしくて、気分が悪いということにして大姫君はずっと床を離れずにいた。女房たちは、
「もう御仏事までに日がいくらもなくなりましたのに、そのほかには小さいこともはかばかしくできる人もない時のあやにくな姫君の御病気ですね」
 などと言っていた。組紐が皆出来そろってから、中の君が来て、
「飾りの房《ふさ》は私にどうしてよいかわからないのですよ」
 と訴えるのを聞いて、もうその時にあたりも暗くなっていたのに紛らして、姫君は起きていっしょに紐結びを作りなどした。
 源中納言からの手紙の来た時、
「今朝《けさ》から身体《からだ》を悪くしておりますから」
 と取り次ぎに言わせて、返事を出さなかったのを、あまりに苦々しい態
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