しません。あちらに残っている子供たちも寂しくてかわいそうですから、せめていっしょに置いてやりたいと思います」
 とまた大将は言ってよこした。そうしてから小さくてきれいな顔をした姫君たちが父のいる座敷へつれられて来た。夕霧はかわいく思って女の子たちを見た。
「お母様の言うとおりになってはいけませんよ。ものの判断のできない女になっては悪いからね」
 などと教えていた。
 大臣は娘と婿のこの事件を聞いて外聞を悪がっていた。
「しばらく静観をしているべきだった。大将にも考えがあってしていたことだろうからね。婦人が反抗的に家を出て来るようなことは軽率なことに見られて、かえって人の同情を失ってしまう。しかしもうそうした態度を取りかけた以上は、すぐに負けて出てはならない。そのうちに先方の誠意のありなしもわかることだから」
 と娘に言って、一条の宮へ蔵人《くろうど》少将を使いにして大臣は手紙をお送りするのであった。

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契《ちぎ》りあれや君を心にとどめおきて哀れと思ひ恨めしと聞く

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無関心にはなれません因縁があるのでございますね。
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