お思いになって、大将が原因で免れがたい運命とはいえ母君はお亡《な》くなりになったとお思いになると、恨めしい因縁の人の弔問に宮はお返辞すらあそばさない。
「どう仰せられますと申し上げればよろしゅうございましょう。重いお身柄をお忘れになってすぐにこの遠い所をお弔《くや》みにおいでくださいました御好意を無視あそばすようなお扱いもあまりでございましょうから」
 女房が口々に言うと、
「いいかげんに言っておくがいい。何を何と言っていいか今はそんなこともわからない」
 宮がこう言って横になっておしまいになったのももっともなこの場合のことであったから、女房が、
「ただ今のところ宮様はお亡《かく》れになった方同然でいらっしゃいます。おいでくださいましたことは申し上げておきました」
 と夕霧へ言った。この人たちは涙にむせかえっているのであるから、
「何とも申し上げようのないことですから、私の心も少し落ち着き、宮様の御気分もお静まりになったころにまた参りましょう。どうしてそんな急変が来たのか、私はその理由だけを知りたい」
 と大将は女房に言った。露骨には言わないが少将は御息所の煩悶した一昼夜のことを少し夕
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