ていた所へ、品がよくてきれいな風采《ふうさい》で身の取りなしのすぐれてりっぱな大将がはいって来たのであった。中央の間《ま》に続いた南向きの座敷に席を作って客は迎えられた。普通の人たちのように女房だけが出て応接をするのは失礼であるといって、宮の母君の御息所《みやすどころ》が逢った。
「あの不幸な友人を悲しみます心は身内の人たち以上ですが、形式的にはそれだけの志も見せられないのでございました。臨終のころ私へ託しましたこともありますから、宮様に対して十分の好意を私はお持ちしております。だれにも死はめぐってくるはずですが、しばらくでもあとへ残りました以上は友人の縁故でできますだけのお世話を申し上げたいと思いまして、もう少し早く伺うつもりだったのですが神事などで御所の中の忙しいころに触穢《しょくえ》のはばかりに引きこもらなければならなくなりますのもいかがと遠慮がいたされましたし、またお庭へ立たせていただくような伺い方は私の心も満足できることでないと思いまして、つい日をたたせてしまったのでございます。大臣などのお歎《なげ》きの深いのを聞いておりますが、親子の愛情とは別な御夫婦の間でいらっしゃった宮
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