あろうことを思って小侍従を衛門督は自邸へ迎えて、熱心に話すのはまたそのことについてであった。
「昔から命にもかかわるほどの恋をしていて、しかも都合のよいあなたという手蔓《てづる》を持っていて、宮様の御様子も聞くことができ、私の煩悶《はんもん》していることも相当にお伝えしてもらっているはずなのだが、少しも見るに足る効果がないから残念でならない。あなたが恨めしくなるよ。法皇様さえも、宮様が幾人もの妻の中の一人におなりになって、第一の愛妻はほかの方であるというわけで、一人お寝《やす》みになる夜が多く、つれづれに暮らしておいでになるのをお聞きになって、御後悔をあそばしたふうで、結婚をさせるのであったら普通人の忠実な良人《おっと》を宮のために選ぶべきだったとお言いになり、女二《にょに》の宮《みや》はかえって幸福で将来が頼もしく見えるではないかと仰せられたということを私は聞いて、お気の毒にも、残念にも思って煩悶しないではいられないではないか。私の宮さんも御|姉妹《きょうだい》ではあるが、それはそれだけの方としておくのだよ」
 と衛門督《えもんのかみ》が歎息《たんそく》をしてみせると、小侍従は、

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