るうち、女御のほうから夫人へ手紙を持たせて来た使いに、病気のことを女房が伝えたために、驚いた女御から院へお知らせをしたために、胸を騒がせながら院が帰っておいでになると、夫人は苦しそうなふうで寝ていた。
「どんな気持ちですか」
とお言いになり、手を夜着の下に入れてごらんになると非常に夫人の身体《からだ》は熱い。昨日話し合われた厄年のことも思われて、院は恐ろしく思召されるのであった。粥《かゆ》などを作って持って来たが夫人は見ることすらもいやがった。院は終日病床にお付き添いになって看護をしておいでになった。ちょっとした菓子なども口にせず起き上がらないまま幾日かたった。どうなることかと院は御心配になって祈祷《きとう》を数知らずお始めさせになった。僧を呼び寄せて加持《かじ》などもさせておいでになった。どこが特に悪いともなく夫人は非常に苦しがるのである。胸の痛みの時々起こるおりなども堪えがたそうな苦しみが見えた。いろいろな養生《ようじょう》もまじないもするがききめは見えない。重い病気をしていても時さえたてばなおる見込みのあるのは頼もしいが、この病人は心細くばかり見えるのを院は悲しがっておいでにな
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