住吉《すみよし》の神をはじめとして仏様への願果たしをなさるようにと申しておきます。私の大願がかなった今では、はるかに西方の十万億の道を隔てた世界の、九階級の中の上の仏の座が得られることも信じられます。今から蓮華《れんげ》をお持ちになる迎えの仏にお逢《あ》いする夕べまでを私は水草の清い山にはいってお勤めをしています。
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光いでん暁近くなりにけり今ぞ見しよの夢語りする
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そして日づけがある。またあとへ、
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私の命の終わる月日もお知りになる必要はありません。人が古い習慣で親のために着る喪服などもあなたはお着けにならないでお置きなさい。人間の私の子ではなく、別な生命《いのち》を受けているものとお思いになって、私のためにはただ人の功徳《くどく》になることをなさればよろしい。この世の愉楽をわが物としておいでになる時にも後世《ごせ》のことを忘れぬようになさい。私の志す世界へ行っておれば必ずまた逢うことができるのです。娑婆《しゃば》のかなたの岸も再会の得られる期の現われてくることを思っておいでなさい。
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