ておられる人かとすぐれた点から想像させられる人だ。宮廷で育って、帝王の愛を一身に集めるような幸福さがあって、まったくだよ。故院は御自身の命にも代えたいほど御大切にあそばしたものだが、それで慢心せず謙遜《けんそん》で、二十歳《はたち》までには納言にもならなかった。二十一になって参議で大将を兼ねたかと思う。それに比べると中納言の官等の上がり方は早い。子になり孫になりして威福の盛んになる家らしい。実際中納言は秀才であり、確かな教養を受けている点で昔の光源氏にあまり劣るまい。父君の昔に越えて幸福な道を踏んでもそれが不当とも思えない偉さが彼《あれ》にある」
と御|甥《おい》をほめておいでになった。可憐《かれん》な姫宮の美しく無邪気な御様子を御覧になっては、
「十分愛してくれて、足りない所は蔭《かげ》で教育してくれるような、そして安心して託せるような人を婿に選びたい気がする」
などと仰せられた。
乳母《めのと》の中でも上級な人たちをお呼び出しになって、裳着《もぎ》の式の用意についていろいろお命じになることのあったついでに、院は、
「六条院が式部卿《しきぶきょう》の宮の女王《にょおう》を育て上
前へ
次へ
全131ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング