宮も源氏も時々歌を助けて、たいそうな音楽ではないが、おもしろい音楽の夜ではあった。酒杯がさされた時に、宮は、

[#ここから1字下げ]
「うぐひすの声にやいとどあくがれん心しめつる花のあたりに
[#ここで字下げ終わり]

 千年もいたくなってます」
 と源氏へお言いになった。

[#ここから2字下げ]
色も香もうつるばかりにこの春は花咲く宿をかれずもあらなん
[#ここで字下げ終わり]

 と源氏は歌ってから、杯を頭の中将へさした。中将は杯を受けたあとで宰相の中将へ杯をまわした。

[#ここから2字下げ]
うぐひすのねぐらの枝も靡《なび》くまでなほ吹き通せ夜半《よは》の笛竹
[#ここで字下げ終わり]

 と頭の中将は歌ったのである。

[#ここから1字下げ]
「心ありて風のよぐめる花の木にとりあへぬまで吹きやよるべき
[#ここで字下げ終わり]

 少しひどいでしょうね」
 と宰相中将が言うと皆笑った。弁の少将が、

[#ここから2字下げ]
かすみだに月と花とを隔てずばねぐらの鳥もほころびなまし
[#ここで字下げ終わり]

 と言った。長居のしたくなる所であるとお言いになったとおりに、宮は
前へ 次へ
全26ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング