のである。紫夫人もこのついでに中宮へお目にかかった。中宮付き、夫人付き、姫君付きの盛装した女房のすわっているのが数も知れぬほどに見えた。裳を付ける式は十二時に始まったのである。ほのかな灯《ひ》の光で御覧になったのであるが、姫君を美しく中宮は思召《おぼしめ》した。
「お愛しくださいますことを頼みにいたしまして、失礼な姿も御前へ出させましたのです。尊貴なあなた様がかようなお世話をくださいますことなどは例もないことであろうと感激に堪えません」
と源氏は申し上げていた。
「経験の少ない私が何もわからずにいたしておりますことに、そんな御|挨拶《あいさつ》をしてくださいましてはかえって困ります」
と御|謙遜《けんそん》して仰せられる中宮の御様子は若々しくて愛嬌《あいきょう》に富んでおいでになるのを見て、この美しい人たちは皆自身の一家族であるという幸福を源氏は感じた。明石《あかし》が蔭《かげ》にいてこの晴れの式も見ることのできないことを悲しむふうであったのを哀れに思って、こちらへ呼ぼうかとも源氏は思ったのであるが、やはり外聞をはばかって実行はしなかった。こうした式についての記事は名文で書かれてい
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