からと思って、内容を唯事《ただごと》風に書いた。
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お逢いできない月日が重なりました。あまりに同情がないというように恨んではいますが、しかし御良人の御同意がなければ万事あなたの御意志だけではできないことを承知していますから、何かの場合でなければお許しの出ることはなかろうと残念に思っています。
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などと親らしく言ってあるのである。
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おなじ巣にかへりしかひの見えぬかないかなる人か手ににぎるらん
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そんなにまでせずともとくやしがったりしています。
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この手紙を大将も見て笑いながら、
「女というものは実父の所へだって理由がなくては行って逢うことをしないものになっているのに、どうしてこの大臣が始終逢えない逢えないと恨んでばかしおよこしになるだろう」
こんな批評めいたことを言うのも、玉鬘には憎く思われた。返事を、
「私は書けない」
と玉鬘が渋っていると、
「今日は私がお返事をしよう」
大将が代わろうというのであるから、玉鬘が片腹痛く思ったのはもっともである。
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