な時に出て行くことはどうかと、そちらへ行くのをやむなく断念することにしましたが、外界の雪のためでもなく、私の身の内は凍ってしまうほど寂しく思われました。あなたは信じていてくださるでしょうが、そばの者が何とかいいかげんなことを忖度《そんたく》して申し上げなかったであろうかと心配です。
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という文学的でない文章であった。
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心さへそらに乱れし雪もよに一人さえつる片敷《かたしき》の袖《そで》
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堪えがたいことです。
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ともあった。白い薄様《うすよう》に重苦しい字で書かれてあった。字は能書であった。大将は学問のある人でもあった。尚侍《ないしのかみ》は大将の来ないことで何の痛痒《つうよう》も感じていないのに、一方は一所懸命な言いわけがしてあるこの手紙も、玉鬘《たまかずら》は無関心なふうに見てしまっただけであるから、返事は来なかった。大将は自宅で憂鬱《ゆううつ》な一日を暮らした。夫人はなお今日も苦しんでいたから、大将は修法《しゅほう》などを始めさせた。大将自身の心の中でも、ここしばらくは夫人に発作の
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