拝されるのであった。でこれを人間世界の最もすぐれた美と申さねばならないのである。貴族の男は皆きれいなものであるように玉鬘は源氏や中将を始終見て考えていたのであるが、こんな正装の姿は平生よりも悪く見えるのか、多数の朝臣たちは同じ目鼻を持つ顔とも玉鬘には見えなかった。兵部卿《ひょうぶきょう》の宮もおいでになった。右大将は羽振りのよい重臣ではあるが今日の武官姿の纓《えい》を巻いて胡※[#「竹かんむり/祿」、第3水準1−89−76]《やなぐい》を負った形などはきわめて優美に見えた。色が黒く、髭《ひげ》の多い顔に玉鬘は好感を持てなかった。男は化粧した女のような白い顔をしているものでないのに、若い玉鬘の心はそれを軽蔑《けいべつ》した。源氏はこのごろ玉鬘に宮仕えを勧めているのであった。今までは自発的にお勤めを始めるのでもなしにやむをえずに御所の人々の中に混じって新しい苦労を買うようなことはと躊躇する玉鬘であったが、後宮の一人でなく公式の高等女官になって陛下へお仕えするのはよいことであるかもしれないと思うようになった。大原野で鳳輦《ほうれん》が停《とど》められ、高官たちは天幕の中で食事をしたり、正装を
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