「お菓子とか、酒とか、よいようにして差し上げるがいい。私も行くべきだがかえってたいそうになるだろうから」
 などと言っている時に大宮のお手紙が届いたのである。
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六条の大臣が見舞いに来てくだすったのですが、こちらは人が少なくてお恥ずかしくもあり、失礼でもありますから、私がわざとお知らせしたというふうでなしに来てくださいませんか。あなたとお逢《あ》いになってお話しなさりたいこともあるようです。
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 と書かれてあった。何であろう、雲井《くもい》の雁《かり》と中将の結婚を許せということなのであろうか、もう長くおいでになれない御病体の宮がぜひにとそのことをお言いになり、源氏の大臣が謙遜《けんそん》な言葉で一言その問題に触れたことをお訴えになれば自分は拒否のしようがない。中将が冷静で、あせって結婚をしようとしないのを見ていることは自分の苦痛なのであるから、いい機会があれば先方に一歩譲った形式で許すことにしようと大臣は思った。そしてそれは大宮と源氏が合議されてのことであるに違いないと気のついた大臣は、それであればいっそう否みようのないことであると思われ
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