ないこととも思うわけのものでございませんから、私も宮中の仰せをお受けしようという気になったのでございます。宮仕えというものは適任者であると認められれば役の不足などは考えるべきことではありません。後宮ではなしに宮中の一課をお預かりしていろいろな事務も見なければならないことは女の最高の理想でないように思う人はあっても、私はそうとも思っておりません。仕事は何であってもその人格によってその職がよくも見え、悪くも見えるのであると、私がそんな気になりました時に、娘の年齢のことを聞きましたことから、これは私の子でなくてあの方のだということがわかったのです。なおお目にかかりましてその点なども明瞭《めいりょう》にいたしたいと思います。機会がなくてはお目にかかれませんから、おいでを願ってこの話を申し上げようといたしましたところ、あなた様の御病気のことをお言い出しになりましてお断わりのお返事をいただいたのですが、それは実際御遠慮申すべきだと思いますものの、こんなふうにおよろしいところを拝見できたのですから、やはり計画どおりに祝いの式をさせたいと思うのです。内大臣にもやはりその節御足労を願いたいと思うのですが、あなた様からいくぶんそのこともおにおわしになったお手紙をお出しくださいませんか」
と源氏は言うのであった。
「まあそれは思いがけないことでございますね。内大臣の所ではそうした名のりをして来る者は片端から拾うようにしてよく世話をしているようですがね、どうしてあなたの所へ引き取られようとしたのでしょう。前から何かのお話を聞いていて出て来た人なのですか」
「そうなっていく訳がある人なのです。くわしいことは内大臣のほうがよくおわかりになるくらいでしょう。凡俗の中の出来事のようで、明らかにすればますます人が噂《うわさ》に上せたがりそうなことと思われますから、中将にもまだくわしく話してございません。あなた様も秘密にあそばしてください」
と源氏は注意した。
内大臣のほうでも源氏が三条の宮へ御訪問したことを聞いて、
「簡単な生活をしていらっしゃる所では太政大臣の御待遇にお困りになるだろう。前駆の人たちを饗応《きょうおう》したり、座敷のお取りもちをする者もはかばかしい者がいないであろう、中将は今日はお客側のお供で来ていられるだろうから」
すぐに子息たちそのほかの殿上役人たちをやるのであった。
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