立ちやすくて気の毒である。
十六日に桂川で斎宮の御禊《みそぎ》の式があった。常例以上はなやかにそれらの式も行なわれたのである。長奉送使《ちょうぶそうし》、その他官庁から参列させる高官も勢名のある人たちばかりを選んであった。院が御後援者でいらせられるからである。出立の日に源氏から別離の情に堪えがたい心を書いた手紙が来た。ほかにまた斎《いつき》の宮のお前へといって、斎布《ゆふ》につけたものもあった。
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いかずちの神でさえ恋人の中を裂くものではないと言います。
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八洲《やしま》もる国つ御神《みかみ》もこころあらば飽かぬ別れの中をことわれ
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どう考えましても神慮がわかりませんから、私は満足できません。
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と書かれてあった。取り込んでいたが返事をした。宮のお歌を女別当《にょべっとう》が代筆したものであった。
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国つ神空にことわる中ならばなほざりごとを先《ま》づやたださん
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源氏は最後に宮中である式を見たくも思ったが、捨てて行かれる男が見送りに出ると
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