辱されていることをまたこれによっても御息所はいたましいほど感じた。
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影をのみみたらし川のつれなさに身のうきほどぞいとど知らるる
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こんなことを思って、涙のこぼれるのを、同車する人々に見られることを御息所は恥じながらも、また常よりもいっそうきれいだった源氏の馬上の姿を見なかったならとも思われる心があった。行列に参加した人々は皆|分《ぶん》相応に美しい装いで身を飾っている中でも高官は高官らしい光を負っていると見えたが、源氏に比べるとだれも見栄《みば》えがなかったようである。大将の臨時の随身を、殿上にも勤める近衛《このえ》の尉《じょう》がするようなことは例の少ないことで、何かの晴れの行幸などばかりに許されることであったが、今日は蔵人《くろうど》を兼ねた右近衛《うこんえ》の尉が源氏に従っていた。そのほかの随身も顔姿ともによい者ばかりが選ばれてあって、源氏が世の中で重んぜられていることは、こんな時にもよく見えた。この人にはなびかぬ草木もないこの世であった。壺装束《つぼしょうぞく》といって頭の髪の上から上着をつけた、相当な身分の女たちや尼さんな
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