うに計らってくるだろうと、頼みにする者が少年であることを気がかりに思いながら寝ているところへ、だめであるという報《しら》せを小君が持って来た。女のあさましいほどの冷淡さを知って源氏は言った。
「私はもう自分が恥ずかしくってならなくなった」
気の毒なふうであった。それきりしばらくは何も言わない。そして苦しそうに吐息《といき》をしてからまた女を恨んだ。
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帚木《ははきぎ》の心を知らでその原の道にあやなくまどひぬるかな
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今夜のこの心持ちはどう言っていいかわからない、と小君に言ってやった。女もさすがに眠れないで悶《もだ》えていたのである。それで、
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数ならぬ伏屋《ふせや》におふる身のうさにあるにもあらず消ゆる帚木
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という歌を弟に言わせた。小君は源氏に同情して、眠がらずに往《い》ったり来たりしているのを、女は人が怪しまないかと気にしていた。
いつものように酔った従者たちはよく眠っていたが、源氏一人はあさましくて寝入れない。普通の女と変わった意志の強さのますます明確になってくる相手が恨め
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