《いつ》迄も生きて居て頂戴よ。え、母《かあ》さん。』
と云つた。
『母《かあ》さん所《とこ》へ行つていらつしやいよう。いらつしやいてばよう。』
癇走《かんばし》つた声が打叩きする音に交つて頻《しきり》に聞《きこ》える。鏡子は立つて行《ゆ》かうとしてまた思ひ返して筆をとつた。
『榮子なんか駄目だ。馬鹿。威張《ゐば》つたつて駄目だよ。兄《あに》さんを撲《ぶ》つたりしてももう聞かないよ。』
滿の罵《のゝし》る声がしたかはたれ時《どき》に、鏡子は茶の間へ出て行《ゆ》くと、お照は四畳半で榮子をじつとじつと抱《いだ》いて居た。[#地から3字上げ](終り)
底本:「新小説」春陽堂
1913(大正2)年2月号
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字を新字にあらためました。
※底本の総ルビを、パラルビにあらためました。
入力:武田秀男
校正:門田裕志
2003年2月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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