来ると云うものじゃございませんか。
 男。しかしなぜわたくしの恋をさまさなくてはならないのですか。
 女。それでございますか。それはわたくしがもうあの写真を外の人に見せたからでございますの。ね、お分かりになりましたでしょう。男の方と云うものは、写真一枚と手紙一本とで勝手に扱うことが出来ますの。男心と云うものはそうしたものでございますからね。Maupassant が 〔notre coe&ur〕 と申した、その男心でございますね。(男の呆れて立ち竦《すく》みいるをあとに残し置き、女は平気にて歩み去る。)



底本:「諸国物語(上)」ちくま文庫、筑摩書房
   1991(平成3)年12月4日第1刷発行
底本の親本:「鴎外全集」岩波書店
   1971(昭和46)年11月〜1975(昭和50)年6月
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2007年12月27日作成
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