、別な夢の生活を持っています。無条件にその夢に身を任せている女もあり、良心と戦いながらその夢を見ている女もありますが、どちらもこの夢の恋は platonique なのでございます。この platonisme が夢の美しいところで、それが無かったら、そう云う女は重婚をいたしているような心持がいたすでしょう。
これだけの説明をいたすのが、わたくしには一通りの骨折ではございませんでした。しかし聡明な、敏捷《びんしょう》な思索家でいらっしゃるあなたには、わたくしの思っている事は、造做《ぞうさ》もなくお分りになりましょう。
あなたがまだ高等学校をお出になったばかりの青年で、わたくしの所へおいでになったころ、わたくしはその日の午後を楽しみにいたしていました。しかしもしあの時のあなたが、いつかお書きになった「若い盗人」と云う小説の中《うち》の青年のような早熟の人でおいでになったら、わたくしはきっとあなたのおいでをお断り申しただろうと存じます。
あなたとわたくしとの中は、夢より外に一歩も踏み出さない中だと云うことが、あのころわたくしには分かっていました。あなたを夫に持つことは不可能だということが
前へ
次へ
全38ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
プレヴォー マルセル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング