う》と外から吹きこんで来ます。そこで三人は蓆屋根の下にはいりながらも、まだ一本の蛇の目を頼みにして、削《けず》りかけたままになっている門柱らしい御影の上に、目白押しに腰を下しました。と、すぐに口を切ったのは新蔵です。「お敏、僕はもうお前に逢えないかと思っていた。」――こう云う内にまた雨の中を斜に蒼白い電光が走って、雲を裂くように雷が鳴りましたから、お敏は思わず銀杏返《いちょうがえ》しを膝の上へ伏せて、しばらくはじっと身動きもしませんでしたが、やがて全く色を失った顔を挙げると、夢現《ゆめうつつ》のような目なざしをうっとりと外の雨脚へやって、「私ももう覚悟はして居りました。」と気味の悪いほど静に云いました。心中――そう云う穏ならない文字が、まるで燐《りん》ででも書いたように、新蔵の頭脳へ焼きついたのは、実にこのお敏の言葉を聞いた、瞬間だったと云う事です。が、二人の間に腰を据えて、大きく蛇の目をかざしていた泰さんは、左右へ当惑そうな眼を配りながら、それでも声だけは元気よく、「おい、しっかりしなくっちゃいけないぜ。お敏さんも勇気を出すんです。得てこう云う時には死神が、とっ着きたがるものですから
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