くつきまとっていたそうです。現に午過ぎの三時頃には、確かに二階の梯子段《はしごだん》の上り口に、誰か蹲《うずくま》っているものがあって、その視線が葭戸越《よしどご》しに、こちらへ向けられているようでしたから、すぐに飛び起きて、そこまで出て行って見ましたが、ただ磨きこんだ廊下《ろうか》の上に、ぼんやり窓の外の空が映っているだけで、何も人間らしいものは見えませんでした。
こう云う具合でその翌日になると、益々新蔵は気が気でなくなって、泰さんの電話がかかるのを今か今かと待っていましたが、ようやく昨日と同じ刻限《こくげん》になって、約束通り電話口へ呼び出されました。しかし出て見ると泰さんは、昨日よりさらに元気の好い声で、「とうとう君、お敏さんの返事があってね、一切僕の計画通り実行する事になったよ。何、どうして返事を受取った? また用を拵《こしら》えて、僕自身あの婆の所へ出馬したのさ。すると昨日手紙で頼んであるから、取次に出たお敏さんが、すぐに僕の手へ返事を忍ばせたんだ。可愛い返事だぜ。平仮名で『しょうちいたしました』と書いてある――」と、得意らしく弁じ立てるのです。ところが今日は妙な事に、こう
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