さないようにと、再三親切な言葉を添えてから、電車では心もとないと云うので、車まで云いつけてくれたそうです。
 その晩は寝ても、妙な夢ばかり見て、何度となくうなされましたが、それでもようやく朝になると、新蔵は早速泰さんの所へ、昨夜の礼|旁々《かたがた》電話をかけました。すると電話に出て来たのは、泰さんの店の番頭で、「旦那《だんな》は今朝ほど早く、どちらかへ御出かけになりました。」と云う挨拶《あいさつ》なのです。新蔵はもしやお島婆さんの所へでも、行ったのじゃないかと思いましたが、打ち明けてそう尋ねる訣《わけ》にも行かず、また尋ねたにした所で、余人の知っている筈もありませんから、帰り※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]々《そうそう》知らせてくれるようにと、よく番頭に頼んで置いて、一まず電話を切ってしまいました。所がかれこれ午近くになると、今度は泰さんから電話がかかって来て、案の定今朝お島婆さんの所へ、家相を見て貰いに行ったと云うのです。「幸、お敏さんに会ったからね、僕の計画だけは手紙にして、そっとあの人の手に握らせて来たよ。返事は明日でなくっちゃわからないが、何しろ非常の場合だから、お
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