ではない。次手《ついで》に云ふ。今の小説が面白くないから、大衆文芸が盛んになつたと云ふのは※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]《うそ》だ。古往今来《こわうこんらい》小説などを面白《おもしろ》がる人は沢山《たくさん》ゐない。少くとも講談の読者ほど沢山ゐない。その又小説の少数の読者も二十代には小説を読み、三十代には講談を読んでゐる。(その原因がどこにあるかは別問題として)大衆文芸が盛んになつたのはほんたうに小説に飽《あ》き足らないよりも、講談に飽き足らない読者を開拓した為だ。[#地から1字上げ](大正十五年六月)



底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
   1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
   1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行
入力:土屋隆
校正:松永正敏
2007年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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