年末の一日
芥川龍之介
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)崖《がけ》の上を
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)朝飯《あさめし》兼|昼飯《ひるめし》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)赤※[#「金+肅」、第3水準1−93−39]《あかさび》の
−−
………僕は何でも雑木の生えた、寂しい崖《がけ》の上を歩いて行った。崖の下はすぐに沼になっていた。その又沼の岸寄りには水鳥が二羽泳いでいた。どちらも薄い苔《こけ》の生えた石の色に近い水鳥だった。僕は格別その水鳥に珍しい感じは持たなかった。が、余り翼などの鮮かに見えるのは無気味だった。――
――僕はこう言う夢の中からがたがた言う音に目をさました。それは書斎と鍵の手になった座敷の硝子戸《ガラスど》の音らしかった。僕は新年号の仕事中、書斎に寝床をとらせていた。三軒の雑誌社に約束した仕事は三篇とも僕には不満足だった。しかし兎《と》に角《かく》最後の仕事はきょうの夜明け前に片づいていた。
寝床
次へ
全8ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング