もつと》も七十何点かの画が、悉《ことごと》くこの種類だと云ふ次第ぢやない。たとへば畠山錦成《はたけやまきんせい》氏の「貴美子《きみこ》」の如きは、少くともかう云ふ西洋かぶれの幣《へい》は受けてゐない作品である。如何《いか》に奇抜《きばつ》がつた所が、せめて此処《ここ》までは漕《こ》ぎつけてゐないと、どうも僕等|素人《しろうと》には、ちと新しい日本画としてのレエゾン・デエトルが覚束《おぼつか》ないかと思ふ。もつと書きたい事もないではないが、何しろ原稿を受け取りに来た人が、玄関に待つてゐる始末《しまつ》だから、今度はまづこの辺《へん》で御免《ごめん》を蒙《かうむ》る事にする。悪口《わるぐち》は岡目八目《をかめはちもく》の然らしむる所以《ゆゑん》だと大目《おほめ》に見て頂きたい。(九・七・十八)



底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
   1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
   1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行
入力:土屋隆
校正:松永正敏
2007年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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