ニが》められるかも知れない。が、戯曲にしさへすれば当然傑出するものを戯曲にせずに置いたとすれば、現在の不明は過去の不明よりも一層非難に価する筈である。又戯曲にした結果、小説よりも効果を欠いたとしても、小説を読まない読者にも鑑賞される場合を考へれば、一概に非難するのも考へものであらう。たとへばストラットフォオドの子供たちの為にお伽噺を書けと云はれたとすれば、シエクスピイアは多少の効果を欠いても、「テムペスト」をお伽噺に書直しさうである。況や前にも書いた通り、或種の著作権侵害だけは法律の庇護を受けてゐない。すると戯曲の書ける作者は戯曲化し得る小説を持合せる以上、さつさと戯曲に書直すのも当を得た処置と云はれぬであらうか?
勿論過去の不明もいかん、多少の効果を損ずるも怪《け》しからんときめつけられるならば――『爾等のうち罪なきものまづ彼を石にて撃つべし』である。僕は唯さう云ふ論者には微苦笑の一拶を与へる外はない。
底本:「芥川龍之介全集 第十一巻」岩波書店
1996(平成8)年9月9日発行
入力:もりみつじゅんじ
校正:松永正敏
2002年5月17日作成
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