いようなんです」この子供は長男に比《くら》べると、何かに病気をし勝ちだった。それだけに不安も感じれば、反対にまた馴《な》れっこのように等閑《とうかん》にする気味もないではなかった。「あした、Sさんに見て頂《いただ》けよ」「ええ、今夜見て頂こうと思ったんですけれども」自分は子供の泣きやんだ後《のち》、もとのようにぐっすり寝入ってしまった。
翌朝《よくあさ》目をさました時にも、夢のことははっきり覚えていた。淡窓《たんそう》は広瀬淡窓《ひろせたんそう》の気だった。しかし旭窓《きょくそう》だの夢窓《むそう》だのと云うのは全然|架空《かくう》の人物らしかった。そう云えば確《たし》か講釈師に南窓《なんそう》と云うのがあったなどと思った。しかし子供の病気のことは余り心にもかからなかった。それが多少気になり出したのはSさんから帰って来た妻の言葉を聞いた時だった。「やっぱり消化不良ですって。先生も後《のち》ほどいらっしゃいますって」妻は子供を横抱きにしたまま、怒ったようにものを云った。「熱は?」「七度六分ばかり、――ゆうべはちっともなかったんですけれども」自分は二階の書斎へこもり、毎日の仕事にとりかか
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