手紙を書いています。ここはもう初秋《しょしゅう》にはいっています。僕はけさ目を醒《さ》ました時、僕の部屋の障子《しょうじ》の上に小さいY山や松林の逆《さか》さまに映っているのを見つけました。それは勿論戸の節穴《ふしあな》からさして来る光のためだったのです。しかし僕は腹ばいになり、一本の巻煙草をふかしながら、この妙に澄み渡った、小さい初秋の風景にいつにない静かさを感じました。………
ではさようなら。東京ももう朝晩は大分《だいぶ》凌《しの》ぎよくなっているでしょう。どうかお子さんたちにもよろしく言って下さい。
[#地から1字上げ](昭和二年六月七日)
底本:「芥川龍之介全集6」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年3月24日第1刷発行
1993(平成5)年2月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1999年2月3日公開
2004年3月10日修正
青空文庫作成ファイル:
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