とを祈りたい。もし同人のうぬぼれが、単にうぬぼれにとどまらない以上は。
○僕の書くものを、小さくまとまりすぎていると言うて非難する人がある。しかし僕は、小さくとも完成品を作りたいと思っている。芸術の境に未成品はない。大いなる完成品に至る途《みち》は、小なる完成品あるのみである。流行の大なる未成品のごときは、僕にとって、なんらの意味もない。(以上新思潮第七号)
○「煙草《たばこ》」の材料は、昔、高木さんの比較神話学を読んだ時に見た話を少し変えて使った。どこの伝説だか、その本にも書いてなかったように思う。
○新小説へ書いた「煙管《きせる》」の材料も、加州藩の古老に聞いた話を、やはり少し変えて使った。前に出した「虱《しらみ》」とこれと、来月出す「明君」とは皆、同じ人の集めてくれた材料である。
○同人は皆、非常に自信家のように思う人があるが、それは大ちがいだ。ほかの作家の書いたものに、帽子をとることも、ずいぶんある。なんでもしっかりつかまえて、書いてある人を見ると、書いていることはしばらく問題外に置いて、つかまえ方、書き方のうまいのには、敬意を表せずにはいられないことが多い。(そういう人は、自
前へ
次へ
全5ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング