芸術その他
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)偸安《とうあん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)そつ[#「そつ」に傍点]のない

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)喃々《なん/\》
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 芸術家は何よりも作品の完成を期せねばならぬ。さもなければ、芸術に奉仕する事が無意味になつてしまふだらう。たとひ人道的感激にしても、それだけを求めるなら、単に説教を聞く事からも得られる筈だ。芸術に奉仕する以上、僕等の作品の与へるものは、何よりもまづ芸術的感激でなければならぬ。それには唯僕等が作品の完成を期するより外に途はないのだ。
          ×
 芸術の為の芸術は、一歩を転ずれば芸術遊戯説に堕ちる。
 人生の為の芸術は、一歩を転ずれば芸術功利説に堕ちる。
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 完成とは読んでそつ[#「そつ」に傍点]のない作品を拵へる事ではない。分化発達した芸術上の理想のそれぞれを完全に実現させる事だ。それがいつも出来なければ、その芸術家は恥ぢなければなら
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