久米正雄
――傚久米正雄文体――
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)浪曼主義者《ロマンチシスト》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)この[#「この」に傍点]久米は
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……新しき時代の浪曼主義者《ロマンチシスト》は三汀久米正雄である。「涙は理智の薄明り、感情の灯し火」とうたえる久米、真白草花の涼しげなるにも、よき人の面影を忘れ得ぬ久米、鮮かに化粧の匂える妓の愛想よく酒を勧むる暇さえ、「招かれざる客」の歎きをする久米、――そう云う多感多情の久米の愛すべきことは誰でも云う。が、私は殊に、如何なる悲しみをもおのずから堪える、あわれにも勇ましい久米正雄をば、こよなく嬉しく思うものである。
この[#「この」に傍点]久米はもう弱気ではない。そしてその輝かしい微苦笑には、本来の素質に鍛錬を加えた、大いなる才人の強気しか見えない。更に又杯盤狼藉の間に、従容迫らない態度などは何とはなしに心憎いものがある。いつも人生を薔薇色の光りに仄めかそうとする浪曼主義《ロマンチシズム》。その誘惑を意識しつつ、しかもその誘惑に抵抗しない、たと
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