をつけ加えた。
「改名主などいうものは、咎《とが》め立てをすればするほど、尻尾《しっぽ》の出るのがおもしろいじゃありませんか。自分たちが賄賂をとるものだから、賄賂のことを書かれると、嫌《いや》がって改作させる。また自分たちが猥雑《わいざつ》な心もちにとらわれやすいものだから、男女《なんにょ》の情さえ書いてあれば、どんな書物でも、すぐ誨淫《かいいん》の書にしてしまう。それで自分たちの道徳心が、作者より高い気でいるから、傍《かたはら》痛い次第です。言わばあれは、猿が鏡を見て、歯をむき出しているようなものでしょう。自分で自分の下等なのに腹を立てているのですからな。」
 崋山は馬琴の比喩《ひゆ》があまり熱心なので、思わず失笑しながら、
「それは大きにそういうところもありましょう。しかし改作させられても、それは御老人の恥辱になるわけではありますまい。改名主《あらためなぬし》などがなんと言おうとも、立派な著述なら、必ずそれだけのことはあるはずです。」
「それにしても、ちと横暴すぎることが多いのでね。そうそう一度などは獄屋へ衣食を送る件《くだり》を書いたので、やはり五六行削られたことがありました。」
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